【裁判】妻の500万円の慰謝料請求を棄却させ、1100万円の減額に成功した事例

紛争の内容
子が成人し、父の扶養により生活している夫と別居をした妻との間で、熾烈な熟年離婚闘争に発展した事案である。妻は、結婚前の交際時から別居に至るまでの長年の不平不満を述べ、夫のモラルハラスメントを主張して、最高裁判所まで争われました。

交渉・調停・訴訟などの経過
大きな争点としては、慰謝料請求の適否、財産分与の方法でした。
財産分与に関しては、夫側は10年以上前の父母からの相続財産があると主張し、特有財産の立証を可能な限り行いました。ただ、特有財産は、複数の預貯金だけではなく、保険(解約返戻金)、投資信託、株式等の様々な形に代わっておりました。
具体的には、預貯金の膨大な取引履歴、相続時の資料を弁護士会照会で取り寄せるなどして立証に挑みました。
一方、妻側は慰謝料の証拠として膨大な分量の陳述書、写真その他の資料を提出しました。

当然、調停では合意できず、裁判に移行。和解が難しいまま、第一審では当事者尋問を行い、夫の特有財産の主張や妻に対する反対尋問で妻側にも落ち度が大きいことを示すようにしました。
その結果、第一審では、特有財産性が一定程度認められ、慰謝料は棄却されました。しかし、妻側は不服として控訴し、夫側も特有財産の点で不服として控訴しました。
控訴審では和解の可能性について審理しましたが、極めて困難であったため、控訴審判決となりました。
妻側の慰謝料請求は棄却、一方で、特有財産についても民法上の共有推定の規定に従ってやや謙抑的な判断がなされました。
結局、双方から最高裁に上告、及び上告受理申立を行いましたが、最高裁は上告を棄却し、控訴審判決が確定しました。

本事例の結末
控訴審判決に基づき、財産分与を行い、本件紛争は司法による「解決」、つまり、最高裁まで争ったことにより、当事者の意図とは無関係に、司法による解決となります。

本事例に学ぶこと
夫側の代理人活動として、立証が困難であったのは、やはり特有財産です。
とくに、夫婦でいる期間が長く、相続などの特有財産を得たタイミングが古い場合には、証拠の散逸が顕著です。取引履歴を取り寄せてみても、入出金があると、どうしても「推認」となってしまい、その入出金が一致していないことも多いので、結局、「特有財産という立証はありません」として、共有財産推定されてしまう可能性があります。
それでも、給与振込用口座の全履歴を提出し、そこから生活費などの必要経費を差し引き、可処分所得からしても到底財産を築けないことなども主張し、かつ特有財産の入出金についても分かり得る範囲で説明をしました。一部、1000万円前後の特有財産が認められたのは幸いでしたが、全てを認めてもらうことができなかったのは残念です。
一般的には、過去の通帳をなくしてしまっている方、銀行に照会をかけても10年分しか取引履歴の開示が受けられず特有財産の立証資料すら儘らない方もおります。銀行との関係性が築けていれば、それ以上前の資料を示してもらえる場合がありますし、弁護士会照会、裁判所の調査嘱託などを全面的に活用する必要があります。

この記事を読んだ方は、必ず、以下の対策を講じておいてください。
すぐに離婚をする、しないに関わらず、困ることがないように、①通帳にこまめに記帳し、決してなくさないこと②記帳のたびに、出金先や使途を通帳に書き込むなどしておくこと、特有財産と共有財産を1円たりとも絶対に混ぜないこと④相続時の財産を示す資料を確実に保管しておくこと、などです。

グリーンリーフ法律事務所は、地元埼玉で30年以上の実績があり、各分野について専門チームを設けています。ご依頼を受けた場合、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。