30代女性が夫に浮気され、20代女性に慰謝料請求を行い、300万円の支払義務を認めさせた事案

紛争の内容
30代の女性は、複数の子育てをしている主婦であり、夫婦仲は比較的円満でした。
そのような矢先、ふとしたきっかけで、夫のスマホに女性からのLINEメッセージが来ていることを知り、夫がスマホのロックを解除していた隙に内容を確認したところ、夫は妻に無断で会社を休み、女性とホテルに行っていることなどが明らかとなりました。
ご相談者は、とっさにLINEのメッセージの保全をし、弊所にご相談されました。
弊所は、「不倫慰謝料請求に強い法律事務所」でしたので、インターネット検索によりたどり着いたようです。

早速、着手金0円でご依頼を受けることになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼を受けた段階では、相手女性の電話番号と氏名は分かっておりましたが、住所が分かりませんでした。
そこで、弁護士会照会という方法で、電話番号のキャリアに対し、契約者情報の照会を行い、回答された氏名と同一であることを確認し、そちらの住所宛に、受任通知書を送付することになりました。
もっとも、女性は一人暮らしとは限らず、家族などと一緒に生活している可能性もありましたので、いきなり内容証明郵便などを送付するのではなく、一定の配慮をした形で書面を送付しました。
そうしたところ、不貞相手が書面を受け取り、無視するなどの不誠実な対応ではなく、話し合いが開始しました。
といっても、間もなく女性は弁護士に依頼しましたので、以降は、代理人同士で交渉を進めることになりました。

代理人同士の協議では、裁判例や今後取り得る手段を基に、何度か綿密な書面によるやりとりを行いました。
ポイントは、求償権の放棄を求めるかどうかでした。
求償権というのは、平たく言いますと、不貞行為をした当事者が被害者である配偶者に対して連帯して支払い義務を負うところ、かかる義務を一方が履行した場合に、もう一方に立替金のように半分程度の支払を請求できるというものです。
求償権を放棄する=配偶者に対する請求がなくなる
という意味があり、例えば、夫婦関係を修復し離婚しないという場合には、結局、夫婦は同じ財布と考えられますので、例えば夫が不倫した場合、不倫相手が妻に200万円を支払ったとしても、不倫相手は夫に100万円程度を請求できるので、結局、夫婦の手元には100万円しか残らない。だったら最初から、求償権を放棄してもらい、100万円を受け取れば一緒(かえって簡易である)という考えになります。
しかし、本件では、別居を開始し、離婚を前提としておりましたので、求償権放棄を理由とする慰謝料の減額には応じない方向で進めました。
ただし、不倫相手は資力に乏しい20代の女性でしたので、分割払いは避けられない状況でした。

本事例の結末
結局、300万円の慰謝料の支払義務があることを認める内容で示談することになりました。
その代わり、3年程度の分割払いを認め、一度も滞りなく支払をした場合には、100万円を免除してあげる(総額で200万円で勘弁してあげる)という内容となりました。
これは、仮に裁判をしても、不倫相手に対する請求が300万円認容される可能性はそこまで高くないですし、何より回収リスクがありましたので、回収リスクの回避を優先した結論となります。

本事例に学ぶこと
不倫相手に対する請求は、不倫の証拠はもちろん、不倫相手の住所・氏名が分からないと進めることが困難です。
しかし、弁護士が依頼を受けたら、不倫相手の自動車、電話番号などから住所・氏名が割り出せることがあります。
または、探偵により尾行調査が行われれば、それらの情報が判明することもあります。
一方で、SNS上でしか連絡先を知らない等の場合には、これらの情報を割り出すのが困難なことが多いです。
まずは、不倫請求をすることが出来るかどうかを含め、弁護士にご相談いただけたらと思います。

弁護士 時田 剛志