不倫の寂しさはどこまでも続く

不倫に走る心裡とつきまとう寂しさ

自己肯定感の低さ

不倫を行ってしまう理由として、自己肯定感の低さが挙げられます。自分自身に自信がなく、自分を認めてくれる承認欲求を満たしてくれる不倫相手との関係に満足を得ています。また、自己肯定感が低いことから、潜在的に破滅願望があったり、不適切な関係を望んだりします。これは、価値のない自分なんて罰せられるべき存在なのだという潜在的意識の影響に起因します。

もっとも、承認の対象は、不貞関係に応じてくれる・性的満足を与えてくれることにあるのであって、不貞相手自身という人間ではないことがまま見られます。そのため、都合よく関係を断ち切られたり、後述のとおり不貞関係が露呈して慰謝料請求をされた場合に簡単に切り捨てられたりということが起きます。

このような結末は、さらに自己肯定感を低下させることに繋がります。あるいは、破壊的欲求、自罰的欲求を満たす行為なのかもしれません。

ロミオとジュリエット効果

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」にちなんで名付けられた社会心理学の理論からも説明することができます。恋愛関係にある男女の関係において、障害があればあるほど二人の関係は燃え上がり、二人で一緒になりたいとの気持ちが高まる現象をいいます。

不貞行為・不倫関係というのは、当然のことながら、社会的に批判されることであり、道徳的・倫理的に非難される行為・関係です。他社から後ろ指をさされ、悪いことだと指摘されながらも、不貞相手とともにその困難・障害を乗り越えていき、関係性を続けることこそが、不貞関係を続ける動機付けになるわけです。

反面、二人の関係が非難されるべきものではなくなってしまった場合には、この効果はなくなり、不貞関係にある二人をつなぎ止めるものがなくなってしまいます。そのため、不貞慰謝料請求をされ、慰謝料を支払うことで解決し、離婚して晴れて堂々と付き合うことができる・誰からも責められない関係となると、関係性が崩れることが多いです。これが、不貞略奪婚がうまくいかないことの原因です。結局また新たな不貞関係を探すことに繋がります。

結局ぬぐい去れない寂しさ

以上のように、不貞・不倫関係は脆弱な関係の上で成り立つものです。そのため、その関係性を維持する上で寂しさを感じることになりますし、関係性が終了しても、不貞ではない正式な関係に移行しても、結局は寂しさが残ることになってしまいます。

不貞行為・不倫関係の代償

不倫・不貞行為は、民法上不法行為にあたり、損害賠償責任を負うことになります。
慰謝料の金額は、婚姻期間・子どもの有無・不貞期間・不貞による離婚の有無・行為の悪質性といった要素を加味して総合的に判断されます。

不貞行為が判明してしまったにもかかわらず、不貞関係を止めることができなかったケースを紹介します。

東京地判平成19年2月21日

夫から、妻の不貞相手に対して慰謝料請求をした事案です。

妻と不貞相手は、飲み会で知り合い、当時不貞相手自身も他の女性と婚姻をしており、他方妻が婚姻していたことを知っていながら頻繁に誘い、夫の知らないところで、度々会うなどしていました。

そんな中、夫に妻と不貞相手との不貞関係が判明するに至りました。
そして、夫は妻に対し、今後は不貞相手と会わないように言い、妻も別れる旨答えました。

しかし、不貞相手は、その後も、妻に対し、頻繁に電話やメール等を送って誘い、妻も夫の知らないところで交際を続けました。なお、不貞相手は不貞相手の妻と離婚しました。

その後、夫は、妻と不貞相手が手を繋いで歩いているのを見かけ、不貞相手の非常識な行動をとがめ、今後は妻と会うのをやめるよう強く申入れをしまいた。

しかし、不貞相手は、『自分の行動が法律上許されないことは認識しているが好きになってしまったので仕方がない』『妻に嫌われたら身を引くが自分からは引けない』『金は払うし法的に処理してもらってもかまわない』などと述べ、夫の話を聞こうとはしませんでした。

夫は疲れ果て、妻と離婚するに至りました。

裁判所は、「被告(不貞相手)は,A(妻)が原告(夫)と婚姻しており,その夫婦関係が破綻した状況にはないことを知りながら,Aを誘って交際を続け,肉体関係を持つに至ったものであって,このような被告の行為は,原告の婚姻共同生活の平和の維持の権利を故意に侵害したものとして不法行為に該当する。

したがって,被告はこれによって原告に生じた損害について賠償すべき義務を負う。」「被告は,Aに原告という夫がいることを知りながら,Aを繰り返し誘って頻繁に密会するなどの交際を続け,肉体関係を持つに至ったのであり,その間,それに気付いた原告から何度も,Aと別れるよう申入れがあったにもかかわらず,被告は,自分からは別れる気がないことを告げ,Aに対して自己を選ぶよう積極的に求め続けたものであって,これにより,原告とAとの夫婦関係は悪化し,原告は食欲不振,睡眠不足等に陥り,精神的,肉体的に疲労した結果,離婚を決意するに至ったものである。

そして,被告がAと交際を始めるまで,原告とAとの夫婦関係は円満であり,その時点では何ら離婚に至る要因はなく,その後,Aとの離婚に至る経緯において原告には何ら落ち度はみられないところである。

これに対し,被告は,自らの行為が許されないことを十分に理解しており,原告からも繰り返しAとの交際を止めるよう注意をされていながら,それを全く意に介することなく,なおもAを誘惑して交際を続け,自己を選択するよう求めていたものであって,その行為態様は悪質といわざるを得ない(被告は,Aに離婚を迫ったことはないなどと主張するが,前記認定のような被告の態度からして離婚を求めていることは明白である。)。
以上の事情を考慮すれば,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,200万円を認めるのが相当である。」と判示しました。

本ケースで、その後妻と不貞相手がどうなったのかは分かりません。
ただ、不貞を止めさせようとする夫から解放され、慰謝料200万円を支払った後、何の障害もない状況で良好な(新たな夫婦)関係となったか疑問です。
果たして不倫関係がうまくいかない寂しさは解消されたのでしょうか。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣
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