
配偶者に不貞の疑いがある場合、探偵に調査を依頼するという方法があり得ます。
依頼する調査の内容にもよりますが、探偵費用は比較的高額となることが多くなっています。
不貞の有無等を調査するために探偵費用を支出せざるを得なかったのだから探偵費用についても不貞慰謝料とあわせて請求したいと考えることが自然な流れですが、それは認められるのでしょうか。
今回は、不貞慰謝料請求と探偵費用というテーマについて解説をしていきます。
損害賠償請求の基本的な考え方

不貞行為は民法上の不法行為に分類されます。
故意または過失により不法行為に及んだ者に対しては損害賠償請求を行うことができますが、賠償の対象となるのは「不法行為と相当因果関係のある損害(一般的な視点から当該不法行為から通常生じるであろうと考えられる損害)」に限定されています。
探偵費用と相当因果関係

現時点においては、不貞行為が疑われる場合、誰しもが探偵を利用し、その費用もおおよそ統一的であるという前提があるわけではないため、探偵費用について必然的に不貞行為と相当因果関係のある損害にあたるという評価はできません。
探偵費用については、探偵による調査の必要性が高い(不貞行為が隠蔽されている、不貞相手の情報が掴めない)、かつ、調査費用が相当な範囲に収まっている(調査期間・手法、得られた証拠の内容、想定される慰謝料額に照らして過大でない)という要件を満たす場合、限定的に不貞行為と相当因果関係のある損害として認められる可能性があるという状況にあります。
探偵費用を損害として認めた裁判例

東京地判平成25年5月30日
事案の概要
原告の妻であるAが被告と同棲して不貞行為に及んだことにより精神的苦痛を被ったなどと主張する原告が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料600万円及び本件訴えのための調査に費やした費用207万9000円の支払を求めたという事案
裁判所の判断
証拠及び弁論の全趣旨によると、原告は、株式会社eにAに関する浮気調査を依頼したこと、その結果、被告とAがbマンションから出かけ、行動を共にしていることやその際の様子が判明したこと、原告は、同社に対し、調査費用として207万9000円を支払ったことが認められる。
上記調査費用は、被告の不法行為を立証するための支出であり、不貞行為の事実を明らかにするためには必要なものというべきであって、不法行為と相当因果関係のある損害であることは否定できないものと解される(本訴においても、被告は、同棲の事実を否認し、争っており、上記調査の結果が証拠として一定の意味を有しているといえる。)。
もっとも、上記調査費用は立証方法の一つにすぎないこと、原告が支出した額は一般に相当因果関係の認められる弁護士費用相当額の損害と比べても多額であること、証拠及び弁論の全趣旨によると、上記調査内容は、被告やAを尾行することによりAの行動を調査し、書面(写真を含む。)により、原告に報告するというものであり、それほど専門性の高い調査とまではいえないことに鑑みると、上記調査費用のうち、10万円について、被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
探偵費用を損害として認めなかった裁判例

東京高判令和6年1月17日
事案の概要
本件は、被控訴人が、控訴人に対し、控訴人は、被控訴人の妻と不貞行為に及んだと主張して、不法行為に基づき、損害賠償金560万5918円(慰謝料300万円、調査費用230万5918円、弁護士費用30万円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたという事案
裁判所の判断
原審は、被控訴人の請求を、損害賠償金176万円(慰謝料100万円、調査費用60万円、弁護士費用16万円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却した。
被控訴人は、控訴人と妻との不貞は、調査会社による調査なくしては控訴人を特定できないものであったから、被控訴人が調査会社に支払った調査費用230万5918円は、控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害であると主張する。
しかしながら、このような調査会社による調査は、主として不貞行為に関する証拠収集を目的として行われるものであり、配偶者に不貞に関する疑いが生じた場合、直ちに調査会社による調査を利用することが一般的であるとまでは認められず、また、調査会社にどの範囲で調査を命じるかが一義的に明らかであるともいえないから、その費用が、不貞行為から通常生ずべき損害であるということはできない。
また、本件においては、控訴人及び妻は、長女が自宅を不在にしている時に控訴人が妻の自宅を訪れるなどして、控訴人と長女や妻の母との対面を避け、控訴人の存在を被控訴人や長女に知られないようにしていたことが認められるものの、他方で、控訴人と妻は、自宅があるマンションの1階ロビーのソファーにおいて、妻が控訴人の膝枕で横になったり、自宅付近を控訴人が妻の腰に腕を回した状態で歩いたり、二人で外出した際に腕を組んだりしていたのであるから、人目のある場所で、親密な男女関係にあることが窺われるような行動をとっていたものといえる。
また、被控訴人は、令和2年7月頃から、妻が、夜遅く帰宅したり、携帯電話の暗証番号を変更し、始終、携帯電話を使用し、入浴中は携帯電話を洗濯機の中に隠したりするなど、妻の行動が変化したと感じ、妻の不貞を疑うようになったことが認められる。
上記の控訴人及び妻の上記行動等の認定事実をも考慮すると、調査会社による調査を利用しなければ、妻が不貞行為に及んでおり、その相手方が控訴人であることを知ることができなかったとまでは認められないから、このような事情の下にある本件においては、調査会社により調査を行うという特別の事情による損害が予見可能であったということもできず、結局、上記調査費用230万5918円が、控訴人の不法行為と相当因果関係にある損害と認めることはできない。
まとめ

今回は、不貞慰謝料請求と探偵費用というテーマについて解説をしてきました。
裁判所の考え方は探偵費用を損害として認めるのは限定的な場面に限るというものですので、不貞相手等に請求できることを前提に探偵費用を支出することには慎重であるべきです。
また、裁判所が探偵費用を損害として認める場合でもその金額は探偵費用のごく一部(10万円~という程度)に限られることが多いため、探偵費用の全額を訴訟で回収することは難しいと言わざるを得ません。
不貞慰謝料の相場が100万円~200万円程度とされていることもあわせ考えると、探偵費用をかけすぎてしまうと慰謝料を満額回収できたとしても赤字となってしまう可能性があります。
以上を踏まえ、不貞について探偵に調査を依頼すべきか、またどの程度の費用をかけるべきかについてご検討いただければ幸いです。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 吉田 竜二
離婚・不倫慰謝料
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成26年の弁護士登録後、離婚や男女問題を中心に多数の家事・民事事件に対応。
協議、調停、訴訟事件のいずれにおいても豊富な実務経験を有し、状況に応じて依頼者に最適・最善の解決方法を提案、その実現に注力する。





