相手方の不倫・不貞根拠づける証拠の収集方法

不貞相手・配偶者に対して、慰謝料の請求をするにあたっては、主張を根拠づける証拠がなければなりません。そこで、あらかじめ、不貞の証拠を収集しておく必要があります。
ただし、どのような手段を使ってでも証拠を収集して良いわけではありません。たとえば、別人のアカウントに不正にログインして、SNSやLINEデータを入手した場合などはどうなるでしょうか。

1 証拠能力
証拠資料を事実認定のために利用しうる資格を「証拠能力」といいます。犯罪行為を行って手に入れたような証拠資料は、違法収集証拠として、証拠能力が認められず、裁判所は当該証拠を根拠にして、事実認定、ひいては、不貞があったとの主張を認めることができません。

民事事件においては、「その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ない」(東京高判昭和52年7月15日)との基準により、証拠能力の有無が判断されます。
この基準によれば、当該証拠の収集手段が人格権侵害に当たるような場合に証拠能力が否定されることになります。具体的に何をもって人格権侵害になるのかは明らかではありませんが、別人のアカウントに不正にログインして、LINEデータを入手する方法は、違法収集証拠として証拠能力が否定される可能性があります。

2 法律違反
配偶者のスマートフォンなどのLINEのやり取りやSNS投稿に、不貞相手との不貞の事実があったことを根拠づける証拠が残っている可能性があります。もっとも、その取得にあたっては、十分に注意しなければ、不正アクセス禁止法等の法律に違反し、罰則を科されるおそれがあります。

不正アクセス禁止法においては、「不正アクセス行為」をすることが禁じられ、これに違反すると、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」とされています(不正アクセス禁止法3条、11条)。「不正アクセス行為」とは、アクセス権限のない人が、他人のID・パスワードを利用して、ネットワークに侵入することをいいます。 たとえば、配偶者のアカウントID・パスワードを何らかの方法で知り、別のパソコン等でログインすることは、「不正アクセス行為」として処罰の対象になります。

また、仮に不正アクセス禁止法等の法律には違反しないとしても、その証拠収集態様によっては、それ自体が不法行為として損害賠償請求の対象となってしまう場合もあります。

このように、証拠収集の方法については、様々なリスクを考慮しながら、慎重に行わなければなりません。

具体的に、どのような手段がOK・NGかという判断は、個別具体的な事情の下で考えていかなければならないため、一概にいえません。

お悩みの際は、弁護士に相談し、当該証拠取得方法で良いのか、話し合って進めていくのが良いでしょう。

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